現在の仕事についた経緯
三菱電機入社後、一貫してネットワーク技術に携わってきました。製作所では15年間、LANの新製品開発に従事し、モノづくりの精神を徹底的に学びました。続く情報技術総合研究所では10年間、通信とセキュリティの融合技術を研究し、世界初のLAN暗号装置開発プロジェクトのリーダを務め、製品化に貢献しました。
その後、名城大学に転籍して18年間、ネットワークのあるべき姿を追究し、学会にて多くの成果を発表しました。大学退職後、これらの研究成果を社会に還元するため、企業時代の経験を活かして設計を一から見直し、協力会社と3年かけて実用化を実現しました。
仕事へのこだわり
私は製作所でのモノづくり、研究所と大学での研究、そして起業を通じて多様な経験を積んできました。製作所では、わずかなミスが大きな不具合を生む世界で、最初からあらゆるケースを想定して設計する重要性を学びました。研究所では、成果の新規性や社会的意義を自ら主張しなければ評価されないことを知り、論理性と説得力を磨きました。多くの人と連携して研究を実用化する過程では、信頼関係と粘り強さの大切さを実感しました。
三菱電機を退職後に赴任した名城大学では、企業の枠を離れ、自由な研究に没頭できました。選んだテーマの新規性と有用性を自問し続ける日々でしたが、その探究の先に現在の事業につながる技術との出会いがありました。研究発表を重ねるうちに、この成果を社会で役立てたいという思いが強まり、退職後に起業を決意しました。
実用化への道のりは容易ではありませんでした。設計書を一から書き直し、協力企業と試行錯誤を重ね、ようやく製品化にこぎつけました。何度も挫折しかけましたが、支えとなったのは、あきらめない心と技術への情熱です。壁にぶつかるたび、解決策を考え抜くことで必ず次の道が見えてきました。
私の仕事のスタイルは、誠実に考え抜くこと、そして決してあきらめないことです。この姿勢を貫き、これからもより良い技術を社会に届けていきたいと思います。
若者へのメッセージ
時代がどんなに変わっても、変わらない大切なことがあります。
それは、自分の得意分野と自分の好きな事を見つけるのが大事だということです。好きな事は努力が苦にならず、自然と知識が深まります。その積み重ねが、自分だけの強みとなり、人生の支えになります。ぜひ、この話題なら誰にも負けないという分野を一つ持ってください。
どんな人でも、必ず壁に当たります。人間関係、仕事の方向性、思い通りに進まない現実——。そんなときこそ、感情的にならず、これまでの経験や知識、周囲の状況を冷静に見つめ直してください。考え尽くせば、必ず次に進む道が見えてきます。友人や仲間の意見を聞くことも大切ですが、最終的な決断は自分で下すことです。その結果に責任を持つことが成長につながります。
他人の意見を尊重し、静かに自分の考えを語れる人になってください。議論を通して自分の信念を磨き、自信を持って前に進んでください。そのような姿勢が、未来を切り開く原動力になると信じています。

