現在の仕事についた経緯
2000年代初頭、松下電器が大規模なリストラを断行したニュースを見た時、“大企業にいれば一生安泰”という神話が、音を立てて崩れたのを感じました。日本を代表する企業ですら社員を守りきれない現実を目の当たりにして、組織に依存して生きることの危うさを、強く実感しました。
「それなら、誰にも奪われない“個人の力”で生きていこう。自分の技術が直接評価され、生涯現役で社会に貢献できる道を選びたい。」そう考えたときに辿り着いたのが、『歯科医師』という専門職でした。
あの時テレビ越しに感じた雇用への強い危機感があったからこそ、組織の看板に頼らず、自分の腕一本で患者さんと向き合う今のキャリアに迷いなく踏み出すことができたのだと思っています。
仕事へのこだわり
私が仕事をするうえで最も大切にしているのは、「人を大切にする判断を積み重ねること」です。
医療の現場では、正しさや効率が優先されがちですが、私は常にその一歩手前で、「この判断は人を守れているか」「安心につながっているか」を自分に問いかけるようにしています。
患者さんに対しては、治療の正解を押しつけるのではなく、選択肢を丁寧に示し、“その人が納得して決められること”を大切にしています。医療は不安を伴うものだからこそ、専門的な説明よりも、まず安心してもらうことが重要だと考えています。安心があって初めて、治療は前に進むものだと思うからです。
スタッフに対しても同じです。成長を急がせることはしません。人にはそれぞれ人生のタイミングがあり、仕事より優先すべきものがある時期もあります。ミスや遠回りがあっても、それを責めるのではなく、「どうすれば安心して働けるか」「どうすれば力を発揮できるか」という環境づくりに目を向けるようにしています。人を管理するのではなく、信じて任せる。その積み重ねが、結果的に組織を強くすると思っています。
経営においても、利益を目的にすることはありません。人を大切にする判断を続けた先に、結果として売上や成長がついてくる。そう腹落ちしています。
人を守ることは遠回りに見えるかもしれませんが、長い目で見れば最も確かな道です。
医療も経営も、本質は人です。
私はこれからも、「正しさより安心を」「管理より信頼を」を軸に、目の前の一人ひとりと向き合い続けたいと思っています。
若者へのメッセージ
今の若い人たちに一番伝えたいのは、自分の人生を全力で生きてほしいということです。
失敗しない選択を探す必要はありません。できるだけ多くバッターボックスに立ってください。挑戦しなければ、ヒットもホームランも絶対に生まれません。
失敗してもいいのです。三振しても、エラーしてもいい。恥をかくことや、うまくいかない経験を恐れないでほしいのです。挑戦した数だけ、経験が残ります。その経験は、誰にも奪われないあなたの財産になります。成功はもちろん嬉しいですが、失敗のほうが人を強くし、判断力を磨き、人生に厚みをもたらしてくれます。
周りと比べる必要はありません。早く結果を出すことより、自分が納得できる選択を積み重ねることのほうが大切です。遠回りに見える道でも、全力で走った経験は、必ず次の挑戦の力になります。
人生は一度きりです。安全な場所に立ち続けるより、打席に立ち続けるほうが、間違いなく面白い人生になります。怖くても一歩踏み出してください。挑戦した分だけ、あなたの世界は広がります。
自分の人生を、自分の意思で、全力で生きてください。その姿は、必ず誰かの希望になります。

