現在の仕事についた経緯
私は幼い頃から、家業であるベッセルに対して自然と親しみを感じており、将来的に自分がこの会社を継ぐことを、ある種当然のこととして捉えていました。
そして、それが現実のキャリアとして自分の中に深く根付いたのは、26歳でのタイ赴任がきっかけです。現地工場の立ち上げとマネジメントという大きな責任を経験する中で、自分の視座が大きく変化しました。その後は商品開発やM&Aなど経営領域にも深く関わるようになり、社長就任に至ったという流れです。
自身の中では、肩書きに関係なく“ベッセルをどう導くか”を常に考え続けてきました。
仕事へのこだわり
私は、常に「変化すること」「挑戦すること」を大切にしてきました。
どれだけ経験を積んでも、どれだけ歴史ある会社でも、今の延長線上に成長があるとは限りません。だからこそ、環境や事業が変わる中でも、自分自身がまず挑戦を楽しむことを意識しています。
若手時代に経験したタイでの赴任は、今でも私の価値観の根幹になっています。文化も価値観も異なる環境で、多国籍の仲間たちとともに工場を運営することは、非常に大きな責任であり、学びでもありました。
その経験を通して、日本の“常識”だけでは立ち行かない現実を知り、多様な視点で経営を考える力が身についたと思っています。
現在、社長という立場になってからも、現場にはよく足を運びます。
たとえば、工場での動線や作業内容、パッケージデザインを見て、気づいたことがあれば細かく伝えるようにしています。
そうした現場感覚は、私が最も大切にしているもののひとつです。
100年企業という安定した基盤がある今だからこそ、攻める必要があると考えています。
特に近年では、新規事業の立ち上げや海外展開に注力しており、アメリカ市場では「3年で売上3倍を達成できなければ撤退する」と明言した上で、本格的な攻勢に出ました。
価格戦略や人員体制を大胆に見直すことで、しっかりと売上を伸ばすことができています。
組織が変化に対して前向きであるためには、まずトップが挑戦し、楽しむ姿勢を持つことが必要だと考えています。
私はこれからも、「変化を恐れず、挑戦を続けること」を自ら体現していきたいと思っています。
若者へのメッセージ
若い皆さんには、ぜひ“飛び込む勇気”を持ってほしいと思います。
失敗を恐れるよりも、自分の可能性を信じてチャレンジしてほしい。若い時期だからこそ吸収できるものは多く、それを一歩踏み出すかどうかで人生は大きく変わると思います。
私自身も、キャリアの転機はタイへの赴任でした。海外という、自分が当たり前だと思っていた価値観が通用しない場所での経験は、人生の中でも非常に大きな影響を与えてくれました。
その後の働き方、組織の見方、人との関わり方——すべてにおいて視野が広がったと実感しています。
だからこそ、できれば若いうちに、海外での長期滞在や実務経験を持つことをお勧めしたいと思っています。
多様な価値観と触れ合う中で、自分の本質や軸が見えてくるはずです。
人生には何が起きるか分かりません。だからこそ、今この瞬間を楽しみ、熱中できることに全力で向き合ってください。
その経験が、きっとあなたの未来をつくる糧になると信じています。