現在の仕事についた経緯
私が小学4年生の時に、両親が小さな酒販店を開業しました。希望に満ちたその姿を、今でも鮮明に覚えています。私は食品メーカー勤務の傍ら、後継者として中小企業診断士やソムリエの資格を取得しましたが、環境の変化に抗えずに家業は廃業。父と2人で最後のシャッターを閉めた日のことは、一生忘れることができません。
その後、「父と同じように厳しい環境にある経営者を支援したい」と東京商工会議所へ転職し、500社以上の経営課題に向き合ってきました。50歳を前に「自分は何を成すべきか」を問い直し、「公的機関の枠を超えて、孤独な経営者のパートナーとして寄り添った支援がしたい」と決意。経営コンサルタントとして独立する道を選びました。
仕事へのこだわり
商工会議所職員時代を含め500社以上を支援する中で痛感したのは、多くの優れた経営者の頭の中が、常に「お金の悩み」で埋め尽くされているという現実でした。「返済や支払いは大丈夫か」「利益は出ているはずなのに、なぜか手元にキャッシュが残らない」「朝も夜もなく働いているのに、思うように利益が出ない」。こうした不安が原因で、本来経営者が持っているはずの鋭い思考力、行動力、創造力を奪ってしまっているケースを数多く見てきました。
だからこそ、私のコンサルティングは、まず「経営者の頭の中に余白(スペース)をつくること」から始まります。
具体的には、会社のお金の流れをさまざまなツールを用いて可視化します。複雑な経営数字を直感的に理解できる図式に落とし込むことで、「なぜ、お金が足りなくなるのか」「どこに手を打てば利益が残るのか」をクリアにしていきます。難解な財務や会計の仕組みを、誰もがわかる言葉と図で紐解いていく。この「分かりやすく伝える」ことは、私がセミナーや研修講師として登壇する際にも最も大切にしているこだわりです。
漠然とした不安の原因が特定され、「明確な解決すべき課題」に変わった瞬間、経営者の表情は劇的に変わります。「やるべきこと」が定まった経営者は、本当に強い。そこから初めて、未来に向けた建設的な戦略を描くことが可能になると思っています。
AIが進化し、一般的な知識や理論は誰でも即座に入手できる時代になりました。しかし、さまざまな要因が複雑に絡み合う経営の現場から本質的な課題を抽出し、経営者の想いに寄り添って、腹落ちする言葉で次の行動へと繋いでいくことは、人間にしかできないと考えています。
経営者の思考を整理し、企業の未来を創造する力を最大限に引き出す。時に参謀として、時に伴走者として、共に未来を切り拓くパートナーであり続けたいと考えています。
若者へのメッセージ
AIの進化により、誰もが瞬時に「解」を得られる時代になりました。効率的に答えを出し、最短距離で成功を目指すことが良しとされる風潮すらあります。しかし、そんな時代だからこそ皆さんに伝えたいのは、「一見無駄に見える遠回りこそが、独自の強みになる」ということです。
私自身、キャリアは順風満帆ではありませんでした。家業を継ぐために取得した資格やスキルは、廃業によって一度は行き場を失ったように見えました。しかし、その「挫折」や「遠回り」があったからこそ、経営者の痛みがわかるコンサルタントとしての今があります。人生において、無駄な点は一つもありません。後になって振り返れば、それらは必ず一本の線でつながります。
10年前に「10年後の自分の姿」を予想できていたでしょうか。環境の変化が予測できないからこそ大切なのは、スマートに生きることよりも、目の前の現実に愚直に向き合うことです。現場で汗をかき、失敗を重ねる中で獲得する「知恵」は、そう簡単に得られるものではありません。
予測不能な時代と言われますが、これまでも予測可能だった時代など無かったはずです。うまくいかない時こそ「人間万事塞翁が馬」。その心持ちさえあれば、どんな変化も自らを成長させる糧となると信じています。

