リーダーインタビュー
加世田 国与士
うちらぼ 代表 / 医学博士・情報工学博士 加世田 国与士 https://uchilab.webnode.jp/

Profile

九州工業大学・情報工学部で情報工学博士を取得。産業技術総合研究所で5年間、マリーキュリー研究所(英国)で6年間、学術研究を行った後、帰国。
民間の研究所を立ち上げて11年間、研究所所長、専務取締役として研究開発・事業運営を展開。その間、順天堂大学・医学部で医学博士を取得。
コロナ禍に独立開業し、「科学のススメ」うちらぼを運営している。論文、学会発表、著書多数。

現在の仕事についた経緯

当初、両親の想い、恩師との出会い、研究者を目指していた友人の死を通して、研究の道を志しており、国内外の研究機関で実績を積み、民間企業でも完全にゼロから研究所を立ち上げて、世界の舞台で活躍しました。
そんな中、新型コロナがアウトブレイク。子どもたちや保護者の悲痛の声を耳にし、週末ボランティアでは限界があると感じたため、「人間力を育む研究所」を創るべきか悩みました。
その後、妻の「今でしょ」のひと言に背中を押されて独立開業。夫婦で無収入となりながらも研究所を設立しました。
二人の貯金と支援をもとに始めた新事業は、現在では園児から大学院生、企業まで広く関わり、全国研究コンクールでは毎年受賞者を輩出し、遂に国内最大級の学会で中学1年生が研究発表し絶賛されるまでに至りました。

仕事へのこだわり

父の教え「コツコツ淡々と続けること」と、恩師の教え「前例のない手技の考案」を積み重ねてきました。継続の先に、自分だけの世界が見え隠れし、研究と人生への探求心が深まりました。

酵素研究を軸に世界最先端の環境で腕を磨き、プロの研究者としての第一歩は、産業技術総合研究所(つくば市)でした。そこには東大出身者がズラリといて、しかも契約は1年更新。生き残るには、「自分らしさ」を見つけるしかありませんでした。そのシビアな(今思えば恵まれた)環境で、学びと挑戦を重ねる中でオリジナリティが育まれました。

研究の成果が実り、次なる挑戦である6年間のイギリスでの研究生活がスタートしました。研究や英語はもちろん、Fair(公平)、Make sense(理にかなう)、Never mind(気にしない)、Share(共有)といった言葉の重みが身に沁みつき、人生観を磨きました。永住したいほど英国の暮らしは肌に合っていたのですが、家族、社会貢献、そして、新しい挑戦のために、帰国して民間企業でゼロから研究所を設立することを決意しました。研究所長・専務取締役として事業を進め、この経験が現在の礎となり、科学を社会に還元する自分なりの道が見えました。

大切にしているのは「(世界中の)正しい情報に基づいた決断と行動」です。国際論文や学会、その他角度を変えた分析を行い現状と未来を見据え、自問自答と相談を繰り返す。最高のシナリオと最悪のシナリオおよび対策案を考えることでリスクが軽減され不安も和らぐ。難しい決断は自身の違和感、腑に落ちる感覚を大切して、「これでダメなら仕方がない」と思えるまで検討を重ねる。その過程で必ず得られるものがあると思っています。
「自分らしさ」を追求するのは簡単ではないですが、だからこそ充実した人生が待っていると思うのです。子どもの頃から変わらず、好きを軸にした自分らしいスタイルを築くことこそが、長く続く原動力に他ならないと考えます。

若者へのメッセージ

誰もが何かに秀でています。その力は、思わぬ組み合わせや新しい分野で発揮されることもあります。「自分を信じて進む」ことは簡単に思えますが、重要な場面ほど実際に行動に移すことは難しいです。だからこそ、日々の小さな成功体験を積み重ねて、自己肯定感を育んで欲しいと思います。

夢の実現の手前にはいくつものマイルストーンがあります。遠く大きな夢を描きつつ、目の前の目標を一つひとつ丁寧にこなしていく。その積み重ねが自信となり、やがて新たな想いや人とのつながりが生まれる。小さな一歩の価値の大きさは計り知れません。焦らず、腐らず、じっくり自分らしい道を歩んで欲しいです。

人生を振り返ると、大学は推薦入学、英国を含む5つの研究機関で活動してきましたが、一度も就職活動をしたことがありません。そして、遂に自分自身で立ち上げた研究所を運営しています。
日々の全力の行動が、そのまま未来への準備だったことに気づきました。「人生は試練の繰り返しであるが、如何にそれを乗り越えるかで人の価値は決まる」父からもらったこの言葉に何度となく救われました。困難さえも楽しめるように日々全力で挑戦しています。