リーダーインタビュー
泉邦治
アイアンドエフ・ビルディング株式会社 代表取締役 泉邦治 https://iandf.co.jp/

現在の仕事についた経緯

高校卒業時に親に反対されながら音大進学を目指しましたが、結果、合格できず親の言うとおりにアメリカへホテルの勉強をしに行きました。しかしそれも身が入らず遊び惚けました。
1995年、故郷神戸での大震災があり、それをきっかけに帰国して復興事業の建築会社に就職しましたが、そこの社長が遊び人で復興事業がほぼ終了した時期に倒産寸前になりました。
これはやばいと思っていたところに当社のホテルの幹部から、「新規にレストランオープンをするが人手不足だから来て働いたらどうだ」と声掛けがあり、1998年にふらふらと入社しました。
そこから父親との確執はありながらも、改めて父親の苦労も知り、改心して真面目になり、現在に至ります。

仕事へのこだわり

バブル崩壊後の厳しい時代を引きずっていた頃に当社に入社し、若い世代が少なく、社内は活気があるとは言えませんでした。私自身も世代的にずっと下っ端として仕事をしていましたが、徐々に役職に就いていきました。社長の息子ということもあり、年上の人が部下となるようなことがほとんどで、常に現場を差配することに自信を持てない、そんな環境に戸惑いを感じていたのが若い頃の感覚です。
そのため、人一倍本を読み、知識では社内外で誰にも負けないようにし、若いなりに怖いもの知らずでリスクテイクするスタイルで、社内の活気づくりが一番大切だと振る舞うようになりました。
ところが、アメリカでの生活で身に着けた合理的思考みたいなものが、時にチームの輪を崩すことがあり、悩みを抱えることもありました。その苦労から、勢いがあるリーダーが良いといっても、自己中心的な振る舞いや理不尽な指示など出すようなリーダーでは会社は持たないことを痛感しました。
ホテル・飲食業というのは人がいないと回せない労働集約産業で、かつ建物や設備などが大きい装置産業でもあるので、長期視点でのビジネスなのです。社員が安定して気持ちよく働いていられる環境づくりに徹するのが会社にとっても社員にとっても幸福につながることだと思い、それが自分の仕事と徹底してきて今に至っています。

若者へのメッセージ

ありきたりですが、インターネット、特にスマホで情報を簡単に手に入れることができる時代において、見出しのインパクトだけで物事を判断する人が増えているように感じます。有名人やフォロワーの多い人の特殊なストーリーや映像ばかりを見ていると、「普通」を下に見る感覚が芽生えることがあります。夢を抱くのは良いことですが、「普通」であることは実際には難しいことです。最初からスペシャルなものに意識が向かうと、自分の期待通りにいかなくなったときに辛い思いをすることになります。
当社のコンセプトとして「高級ではなく上質に」という言葉を使っています。“高級”は外面的な価値に重きを置きますが、“上質”は気持ちの上で心地よさや安心感を与える内面的な価値観です。つまり、普通でありながらも上質であることは、仕事だけでなく人としての在り方としても重要です。
若い人には普通であることを誇りに思い、普通を伸ばしていくことを心掛けるようアドバイスします。特に本をじっくり読むことは、普通とは何かを考える良いきっかけになるでしょう。