現在の仕事についた経緯
私は、昭和天皇の誕生日である4月29日生まれだったので、幼少期から祖父に特別扱いされていました。
家業を継ぐ跡取りとして洗脳されていたので、小学校の作文も一般的にはプロ野球の選手やパイロットなどの夢が多い時代に“家業を継ぐ”と書いていました。心意気というよりも、そういうことだと思っていました。個人的には漁師か大工が良かったです。
中学2年生から麹つくりと仕込みの手伝いをしていたので、醸造歴40年です。
20歳の頃、父の体調不良や入院などがきっかけで家業の醸造を始めました。しかし、毎週同じ仕事のルーティーンなので、私には刺激が足りませんでした。
そこで、商品開発意欲が生まれて、捨てていた味噌のたまりを使った「九曜むらさき」を完成させ、それが大ヒットとなりました。そこから次々と新商品を開発しています。
仕事へのこだわり
もともと親子3人とパートさんで営む小さな醸造家の商店でした。それでも祖父の時代は、東京の三越百貨店に口座を持っていました。父の時代は、観光バスを使った旅行が主流で、地元の特産品が売れたため、三越をやめて地元に特化した経営に切り替えました。
私の時代は、バブル景気が吹っ飛んだ時代です。これまでは、古いものは捨てて新しく作り変える近代化の時代でした。醸造が軽視され、添加物や甘味料を入れて商品を簡素化して作り変えた時代だと思います。
それは許せないと感じる自分が居たため、新商品の開発をしようと決意しました。
父と喧嘩をしてでも、ステンレスタンクで造る醤油ではなく、木樽を使った伝統的な醤油つくりを推し進めました。
工業化した安い商品も大事ですが、伝統的な醤油がなくなったらどう思いますか?
しょうゆ、米、味噌汁は日本人の心の一部だと思う私からみて、「工業製品だけになってしまったらあかん」と思います。
私は、添加物を入れず最高の商品を造れるメーカーとして方針定め、本物つくりを始めました。
それと同時に、蔵を一般開放し見学と体験ができるようにして納得してもらおうと思いました。すると観光バスが入り、メディアからの取材も増えました。
昔と同じことをして、「100年前と変わらない」と自慢しているところを目にしますが、それは先代がすごいのであって、「あなたは何をしたんですか」と思います。
私は、醸造を通して、歴史、健康、美容、美味しい等、色々なことを考えて未来を創ろうと思っています。
現在は、フランスのボルドーで醤油造りも始めました。世界の人に醤油のすばらしさを知ってほしいと思っているからです。
これからも日本の伝統は、世界の人に感動と満足を与えると思っています。
若者へのメッセージ
何のために生きていますか?家族のため、自分のため、社会のため?
あなたのやりたいことが出来ていますか?お金のために我慢していないですか?
それでいいですか?人それぞれ考えがありますが、自分の中に「ストン」と落ちてくる納得がありますか?
その意思を大事にして仕事をしてほしいと思います。
私は、「世界一の醤油をつくりたい」と考えています。
会社の商品やサービスは、思いが形になります。そのために何をするかが決まり、行動がぶれなくなります。
あなたには、それがありますか?誰かにコントロールされていませんか?
何かに賛同するのも良いですが、何のためにやるか、清い心で考えてみてはいかがでしょうか。