現在の仕事についた経緯
私自身は、祖父の代から続く人形師の家系に生まれ育ちました。祖父は人間国宝に認定された人形師で、人形師の頂点を極めた人間でした。また祖父のあとを継承した母も女流作家として活躍をした人形師でしたが、私は人形師になるつもりも家業を継ぐつもりも全くありませんでした。
私は大学生の頃から作家になりたいと思っていたので、大学卒業後は出版社に就職し、作家さんの原稿を編集する仕事を通じて書く勉強をしたいと考えていました。
しかし、私が23歳、社会人2年目のときに、父親が身体を壊して急逝してしまい、それをきっかけに3代目の継承者として家業に戻りました。
仕事へのこだわり
父が急逝し、母1人では家業を続けられないという状況になったことで、半ば強制的に家業に戻ることになりました。
戻った当初は、夢を失った喪失感でいっぱいで、やる気も持てませんでしたが、「このままではダメだ」と自分の心を立て直し、この仕事をする意味を懸命に考え続けました。そしてこの仕事が、子どもの健やかな成長を願う親の気持ちに寄り添える仕事なんだと気づいてから、必死に経営の勉強を始めました。
最初は知識も経験もなく、悩んでばかりでしたが、一歩ずつ学び続けることで、自分自身の中に「ものづくりへの使命感」が芽生え、それが今の私の原点になっています。
経営者としての自覚が芽生えたのは、24歳で専務取締役に就任してから「何も分からない」「相談できる相手もいない」という孤独の中で必死にもがいていた時期です。
社員に「どうしたらいいですか?」と聞かれても答えられず、朝4時に起きてビジネス書を読み、土日はセミナーに通うという日々を続ける中で、「誰かに言われてやるのではなく、自分で決断し、責任を取らなければいけない立場なんだ」と強く実感しました。
そして何より、「自分が作るものを通じて誰かの心を癒し、幸せにできるかもしれない」という気づきが、経営者としての自覚を持つきっかけになったと思います。そして、その時に気づいたことを今日までずっと大切に育ててきました。
私が経営する会社では、真心をこめた最高の商品とサービスを通して、お客様に幸福感を実感して戴くことを経営理念に謳っています。この理念を実現することが仕事であり、また理念を実現することを通して、社員も幸せになることをとても大切に考えて、日々の仕事に取り組んでいます。
若者へのメッセージ
「自分は何が好きなんだろう」「得意なことは何だろう」と、一度、突き詰めて自分自身を見つめてみてください。そして、紙に書き出して整理してみると良いと思います。
特に短所よりも長所に目を向けることが大切です。自分の良いところをしっかり確認して、自分の可能性を最大限発揮するためにはどうしたら良いかを考えてみましょう!
そして、自分の可能性を諦めずに追求してみてください。若いときに一生懸命に取り組んだことは、必ず自分自身の財産として蓄積されていきます。その財産が一定量蓄積されたとき、一気に可能性が開花するのを経験すると思います。
人と比較して「たいしたことではない」などと思わず、オンリーワンの特別な人生経験に自信をもってください。自分自身を信じて諦めずに進んでいくと、開花する時期に個人差はありますが、必ず自分自身の本来の可能性が開花するときが訪れます。
人生二度なし。自分を信じて、天から与えられた人生を力の限り生きてください。