リーダーインタビュー
河本英之
シーズアンドグロース株式会社 代表取締役 河本英之 https://seeds-and-growth.co.jp/

Profile

高校3年生時に私立修道高校を中退。翌年大検を取得し、2001年に上智大学経済学部経営学科に入学。
2005年、株式会社リンクアンドモチベーションに入社し、4年目に全社のMVPを獲得。
2010年7月、シーズアンドグロース株式会社を設立。独自かつ完全オーダーメイドのプログラム設計で、多くの企業の新卒採用と人材育成を支援。
著書『新卒採用の常識を変える カレッジ型イベント』(金風舎)など多数。

現在の仕事についた経緯

周囲からの期待に対するプレッシャー、学校のカリキュラムという“敷かれたレールの上を歩くことが常識”とされる社会の考え方に疑問を抱き、高校を中退しました。

当時は、自分には価値がないと生きる意味を見失い、家に引きこもるようになりました。

しかし、転機が訪れたのは2000年のシドニーオリンピック。高橋尚子選手が金メダルを獲得し、心から楽しそうに走る姿を見た瞬間、私は衝撃を受けました。「なぜ高橋選手は世界一になってもあんなに楽しそうなのか?」という疑問が胸に湧きました。考え抜いた末に、彼女は他人との競争ではなく、自分の限界に挑んでいたのだということに気づきました。これにより、私は自分の人生を他人と比較するのではなく、自分の限界に挑戦するべきだと強く思うようになりました。

今までは周囲からの評価や順位ばかりを気にして、自分自身と向き合うことを忘れていたのだと気づいた瞬間、次こそは、自分の意志で、自分のスタイルで「もう一度挑戦してみたい」と思いました。

そこから勉強を始める決意をし、独学で大検を取得し、上智大学に合格することができました。この経験は、“人の可能性の大きさ”を実感させてくれました。

大学ではサークルを立ち上げて拡大を試みましたが、急激な成長を目指したあまり、結局そのサークルは崩壊してしまいました。この経験を通じて、私は「自分一人の力では限界がある」と感じ、組織づくりに対する興味を持ち始めました。

大学卒業後、「5年後に企業を立ち上げる」という目標を掲げてリンクアンドモチベーション社に就職。新卒採用のコンサルティング業務を中心に、採用戦略の立案から社員の育成まで、組織人事の分野を網羅的に学びました。その後、宣言通りシーズアンドグロース株式会社を設立し、起業という新たな挑戦を始めました。

高校中退から独学で大学合格を果たし、その後も挑戦し続けてきた経験は、私の行動や価値観の原点となっています。自分の限界を挑戦することこそが本当の意味での「挑戦」であり、楽しさであると気づくことができました。人間は、やればできるということ、そして自分の可能性は他人に決められるものではなく、自分自身で決めるものであることを深く実感しています。

仕事へのこだわり

私たちがこの仕事を通じて本当に実現したいのは、「いい社会をつくること」、そしてそれを「後世に引き継いでいくこと」です。そのために、“働く”ということに前向きな意味を取り戻し、社会に希望があふれる状態を目指しています。

そんな想いがあるからこそ、日々の仕事にも強いこだわりがあります。たとえば「仕事をこなす」という言葉は使いません。なぜなら、“こなす”という言葉には「作業的に済ませる」というニュアンスがあり、そこに価値は生まれないと考えているからです。

仕事とは、本来「価値を生む行為」です。お客様の期待を超える“驚き”を届けること、ゼロからイチを創り出すこと、あるいは今あるものを工夫して価値を最大化すること。その過程こそが本当の仕事だと信じています。

また、私たちは「忙しい」という言葉も使いません。忙しい=心を亡くす。これはまさにその通りで、「忙しいからしょうがない」と思ってしまえば、そこに工夫も成長も生まれません。私たちは“忙しい”ではなく、“繁盛している”と捉えます。期待され、頼られている証。そのありがたさを忘れないようにしたいのです。

前職時代、独りよがりで仕事を進め、上司に叱られた経験があります。そのとき学んだのは、「自己成長が目的ではない。すべてはお客様への価値提供のためにある」という姿勢。誰かのために、真摯に、丁寧に向き合う。これが、私が仕事で一番大切にしている姿勢です。

私はエリートではありません。だからこそ、人の痛みがわかるし、迷いや悩みに寄り添える。そんな自分だからこそできるコンサルティングがあると信じています。そしてその価値観は、3人の子育てを通してさらに深まりました。感情でぶつからず、理解し、寄り添う。子どもたちとの関わり方が、そのままお客様との向き合い方にもつながっています。

「仕事があることはありがたい」。この感覚を忘れずに、今日も誰かの役に立てるように、私たちは丁寧に価値を届けていきます。働くことをポジティブに。そんな社会を本気でつくっていく仲間と、これからも一緒に歩んでいきたいと思っています。

若者へのメッセージ

昨今、日本は少子高齢化や人口減少、経済の停滞など、ネガティブなニュースが多く報じられがちです。確かに、社会には課題が山積みで、時には未来が暗く感じられることもあるでしょう。しかし、未来はメディアが決めるものではなく、私たち一人ひとりの手の中にあります。

私自身、高校を中退し、誰もができないところからスタートしました。それでも、今では多くの仲間と共に新しい価値を創造することができています。これは、私が自分に期待し、可能性を信じたからこそ成し遂げられたことです。

皆さんも、自分に期待してください。可能性は無限大です。社会も、既存の枠組みに乗るのではなく、自ら作り上げていくものです。自分の手で未来を切り拓く力を持っているのです。

また、傍観者ではなく当事者として関わってほしいと思います。社会の課題に対して「誰かがやってくれるだろう」と考えるのではなく、「自分が何かできることはないか」と考え行動することが、変革の第一歩です。小さな一歩が、大きな変化を生むのです。

未来を作るのは、他でもない皆さん自身です。新しい価値を創造し、社会をより良くしていくために、今できる一歩を踏み出してください。私たち大人は、皆さんの背中を全力で支えます。共に未来を切り拓いていきましょう。